同年齢の子どもたちのみでクラス編成をすることが一般的だった保育園や幼稚園ですが、現在では0歳児から6歳児までの幅広い年齢の子どもたちをひとつのクラスやグループとして編成し、互いに交流を持たせる異年齢保育(縦割り保育)が注目を集めています。子どもたちの協調性や社会性を育み、他人への思いやりや責任感を養っていくというメリットのある縦割り保育についてご紹介します。
同年齢の子どもたちのみでクラスを編成する横割り保育と異なり、様々な年齢の子どもたちをひとつのクラスやグループに集めて編成するのが縦割り保育です。少子化により児童数が減少したことが要因となって縦割り保育を行っている保育園や幼稚園もありますが、児童数が十分なところでもあえて縦割り保育を取り入れるケースが増えてきています。完全にクラスを分けている場合もあれば、グループを作り1週間のうち数日だけ一緒に過ごすような場合もあり、0~1歳児には専用スペースが確保されていることもあります。いずれにおいても、縦割り保育の狙いは、異なる年齢の子どもたちを交流させることです。さまざまな年齢の子どもたちを交流させることで、社会性や協調性を育み、社会に出た時のための素地とするのです。
縦割り保育によるメリットは、さまざまな年齢の子どもたちが交流することで、ひとりひとりが刺激を受けるようになることです。年齢の低い子どもたちは、自分以外の子どもたちを知り、お兄さんやお姉さんたちの振る舞いを見て学んでいきます。一方、年齢の高い子どもたちも、お兄さんやお姉さんとして慕われたり頼られたりすることで、年上としての責任感を抱いていくのです。このように、同じ年齢の子どもたちを画一的に活動させるだけでは得られない刺激や創造性が、縦割り保育のメリットといえます。またこのようなメリットを最大限に活かすためには、子どもたちの活動をマニュアル通りに固定せず、その場その場の発見や創造を大切にしていく必要があります。
たとえば、異年齢の子どもたちが一緒に行うおままごとでは、年齢に応じてお父さんお母さんの役から赤ちゃんの役まで役割分担をしたり、小さな子どもだけでは使えない道具遊びができたりと、子どもたちが互いに刺激し合いながら、遊びの幅や創発性を広げていきます。それだけでなく、年齢や体格、性格などが異なる多くの子どもたちが互いに触れ合うことで、自分以外に多様な人間がいると身をもって知り、多様性の理解、人への思いやりなども育まれていきます。このように縦割り保育による異年齢の交流によって、多様な他者を前提にした人格形成が進められ、人間関係の築き方や社会的な振る舞い方が身についていくのです。
縦割り保育で成長できるのは、子どもたちだけではなく保育士の成長にもつながります。多様な子どもたちと一度に関わるため、ひとりひとりの個性に応じた配慮が求められる上、場の変化を見逃さない注意力も求められます。子どもたちが築く人間関係も、同年齢同士で形成されるものとは異なります。このような場をうまく機能させるためには、保育士が手を出しすぎて年上の子どもたちの自主性を奪ってはならず、適度なサポートによって子どもたちの力を最大限伸ばすことがポイントになります。このように、これまでのキャリアでは出会ったことのないような保育の場に立ち会いケアをしていくことが、保育士としての成長やスキルアップになるのです。
このように縦割り保育は、子どもたちにも保育士にとっても刺激となり、社会性の幅を広げるきっかけとなるのです。